イタリアの革用ナイフ トゥリンチェット

イタリアへ行きたかった理由のひとつに、革用のナイフが欲しかったということがありました。以前見た雑誌で、イタリアの職人が医者のような白衣を着て、下の写真のようなナイフを握っていたのが印象的で、なんとなく憧れを感じていました。
日本では、革を裁つのに包丁(下の写真)を使っているところがほとんどだと思います。包丁は非常に使い勝手が良く、不満は全くなかったのですが、それでも、イタリアで使われているというナイフを試してみたかったのです。
旅行の前にインターネットで下調べをすると、どうやらトゥリンチェット(trinchetto)と呼ばれるものらしいということがわかりました。フィレンツェで道具が買える店も調べました。
trincetto
Trincetto
包丁
普段使っている包丁
フィレンツェに着いた翌日、中央市場でドイツ風の朝食を食べたあと、"SENATORI"という店へ向かいました。 駅員さんにRESISTENZAという停留所までトラムで行くよう教えてもらい、そこで26番バス乗り場を見つけて乗り込みました。バスの運転手さんに、目当ての停留所の名前や店の名前を伝えますが、知らない様子で、このままバスに乗っても着くのか否か判然とせず、不安なまま、40分間は乗っていたと思います。しびれを切らして再度尋ねると、ある停留所の前で「たぶんこの辺りだと思う」と曖昧なことを言われ、そこで降りました。周囲にそれらしいものは見えず、全く途方に暮れました。フィレンツェ市内からかなり離れた、郊外の商店街の真ん中でした。天気が悪く大雨で、道を歩く人も少ない状態でした。冷たい雨が降りしきる中を、道を間違えたりして、30分以上歩き回ってようやく店に着きました。中に入って、道具売り場の棚から目当てのトゥリンチェットを見つけ、購入しました。税金が高くて驚きました。
店内を歩いて回ってみて「三筋の金具屋と変わらないなあ」と思いました。扱っている金具や糸をよく見てみましたが、別段珍しく感じるものはありませんでした。苦労して辿り着いただけに拍子抜けするような気分でしたが、ナイフが買えたのは良かったです。
翌日、TADDEIというお店の職人の方(革を縫製せず、独自の成形技術で革小物を作っている)を尋ねたとき、トゥリンチェットの使い方を教えてもらいました。包丁とは逆で、前方に押して切るのだそうです。TADDEIのトゥリンチェットは3代前から伝わるものらしく、手に馴染んで使いやすそうでした。
SENATORI
"SENATORI" 店内の様子
帰国してからすこしずつ使ってみていますが、やはり包丁に慣れているのでいまいちピンと来ません。使いやすいように革を巻いてみましたが、これから活躍するでしょうか…。
trincetto